この記事は小説「手紙」をこれから読もうか考えている方に向けた作品紹介&感想です。
読みたくなるようなおすすめ要素を盛り込んで紹介します。
本書はヒューマンドラマで、ミステリー・推理小説の印象が強い東野圭吾さんにとって珍しい一作なので特におすすめです。
ネットで「東野圭吾作品おすすめランキング」の記事が数多くありますが「手紙」は必ず上位に入ってますね!
多くの人の心を響かせている「手紙」。
ぜひお読みいただきたい、そんな気持ちで紹介します!
まだ読んでない人に、東野圭吾作品の面白さを知ってもらいたいよ!
・ヒューマンドラマが好きな方
・感動のラストを期待する方
・泣きたい方
・読書が苦手だけど名作が読みたい方
本書は興味深い内容なので、読書が苦手な人でも途中で飽きたりせず最後まで読み切れるのではないかな、と思います。
ページ数は多いですが、台詞が多く登場人物の性格や心情も想像しやすいと思います。
明るい内容の話ではないですが、難しい文字が沢山出てきて読めないということは無いです。
また、家族や社会、主人公の人生を描いたストーリーなので、気付きが多く考えさせられる話です。
そんな気付きや他の価値観に触れることができるのも、読書の醍醐味だと思います。
ぜひ読書が苦手な方も、本書の完読に挑戦してもらいたいです!
作品を楽しみためのポイント
本作のポイントは3つあります。
1つ目は犯罪加害者の家族という視点で物語が描かれていることです。
主人公は強盗殺人犯の弟・直貴です。
進学、夢、恋愛、就職、様々な場面で犯罪者の弟という運命がたちはだかり苦悩する姿が描かれています。
2つ目は社会的差別についてです。
直貴は自分が犯罪を犯したわけではないのに理不尽な対応をしてくる社会の人々に不満を覚えます。
直貴が差別に対してどう思い、どう向き合い、どう対応していくのか、という点も本書の興味深いところです。
3つ目は手紙です。
獄中の兄・剛志と弟・直貴の連絡手段であり、2人を繋ぐものです。
剛志が逮捕されてからは、手紙でしか剛志の事は描かれていません。
手紙の内容で伝わってくるものが剛志の全てです。
終盤の2人の手紙、特に剛志の手紙は、剛志の心境の変化が読み取れます。
設定からしてなんだかすごい小説だね。
あらすじ
主人公・直貴の唯一の家族は、兄・剛志でした。
父は直貴が3歳の時に交通事故で亡くなり、母は過労で倒れて亡くなりました。
剛志は母の死をきっかけに高校を中退して働き、直貴を養っていました。
剛志の願いは直貴の大学進学でした。
しかし直貴はお金を理由に進学せず、自分も働きたいと思っていました。
剛志にばかり負担をかけていることや、剛志が無理をして身体を悪くしていることを知っていたからでした。
しかし、剛志は頭のいい直貴は大学に進学するべきと頑なでした。
死んだ母がそう願っていたように、剛志も自分が無理してでも直貴に進学してほしいと思っていました。
しかし、進学に必要なお金に困っていたことは事実でした。
大学資金を確保したい剛志は強盗に入ります。
しかし剛志は、強盗のみならず殺人の罪まで犯してしまいます。
そして逃亡中、警察に逮捕されます。
剛志の事件によって、直貴は2つの状況を余儀無くされます。
1つは高校生にして一人で生きていかなければいけないこと。
もう1つは殺人犯の弟として生きていかなければいけないこと。
様々な感情が直貴の中に渦巻きます。
兄に対する後悔の念、進学の未練、生活資金の悩み、孤独感、被害者遺族への罪悪感…。
そんな中、刑務所に居る剛志から毎月手紙が送られてきます。
手紙はいつも獄中生活のことや、直貴を心配したり、励ましたりする内容でした。
直貴は自由を束縛された兄を憐むとともに、生きるのに一杯一杯の生活を送ります。
しかし、直貴の苦しみは成長・年齢とともに悔しさと怒りを伴います。
その理由は様々な局面で「強盗殺人犯の弟」というレッテルが付いてくるからです。
辛い境遇の中でも懸命に生きているのに、夢も恋愛も幸せの一歩手前で、そのレッテルゆえ苦しめられます。
就職先でも差別的処遇を受けます。
不貞腐れる直貴のもとに1人の男性が姿を現します。
何故人は差別するのか?
その答えを男性は直貴に教えてくれます。
その男性との出会いをきっかけに直貴は自分の考え方を改めて、新たな一歩を踏み出します。
順風満帆に物事が進み始めた頃、再び直貴はレッテルゆえ、将来の生活に危惧を感じます。
全てのあらゆる苦難を乗り越えて、直貴は一つの決断をし、その決意を手紙にしたためます。
その後直貴は本来なら手にすることのなかった剛志からの1通の手紙を、思いもよらない形で読むことになります。
手紙には剛志の想いが綴られています。
「私は手紙など書くべきでなかったのですー。」
そして物語は感動のラストで締めくくられます!
直貴の夢とは…?
直貴の恋愛の行方は…?
人は何故差別するのか…?
直貴の決断とは…?
剛志の手紙にはどんな想いが綴られていたのか…?
兄弟の未来は…?
きっとあなたも涙する!東野圭吾の不朽の名作!
ぜひ読んでみてください!
感想
一言で言うなら、感動です!
この物語の憎いところは兄・剛志が無邪気で憎めない奴というところです。(ん?日本語ややこしい!)
恵まれない環境でありながらも、自己犠牲の念を感じさせない剛志は、本当に弟のことを想ういい兄だったんだと想像できます。
そんな剛志に直貴も最初は可哀想と思っていたはずです。
でも唯一の家族が自分の足を引っ張ってくるジレンマ…。
直貴の苦難には涙が止まりません。
でも、そんな苦しい思いをしながらも恨みながらも兄はやっぱり唯一の肉親なんだと思い知らされます。
家族とは切っても切れないんですね。
私は終盤の剛志の手紙に、胸が苦しくなりました。
自分の甘さに気付き、自己嫌悪を感じる剛志から、子供のような無邪気さは消えてしまったと思います。
そして、ラストシーンはもう胸も目頭も熱くなります。
読み終わった後はジョン・レノンの「イマジン」を聴いてしまいました。
作中にこの曲が何度か出てくるのですが、この音楽で余計に涙が止まりません。
感情が昂ぶってうまく感想が書けませんが、とにかく感動です!
読んで損することはありません。
ぜひ「手紙」読んでみてください!
では、最後までお読みいただきありがとうございました!
追伸
本書では差別についても言及してます。
その考え方はとても勉強になりました。
本当に深い作品です。
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